(この記事は約 9 分で読めます。)
ここ数年で耳にする機会が増えた、「運用型テレビCM」。
とはいえ、「従来のテレビCMと何が違うのか」「運用型テレビCMを始めるメリットはあるのか」「相場はどれくらいなのか」など、疑問がある方もまだ多いかもしれません。
そこで今回は、広告業界において、大きな柱の一端を担うことになるかもしれないコンテンツである「運用型テレビCM」について、なぜ注目されているのか、その背景やメリットを含め、徹底解剖していきたいと思います。
1.2種類の広告の違い
広告、と言ってもその種類は多岐に渡ります。テレビCMをはじめ、最近はWeb広告市場も急成長を遂げているようですし、雑誌や新聞・チラシという紙媒体の広告もまだ根強く残っている印象です。このように媒体が様々ある広告ですが、大きく2種類に分けられています。
① 認知向け広告
その名の通り、「認知してもらう」ことを目的とした広告です。売り上げアップや問い合わせ件数アップを直接の目的としているものではないため、よりインパクトのある広告を出し、「印象に残す」ということが最重要といえます。代表的な媒体として、テレビCMやチラシ、街頭看板などが挙げられます。
ここで1つのモデルを紹介します。主にマーケティング業界で使われている「AISAS(アイサス)」と呼ばれる“消費者の購買行動モデル”です。これは、Attention(認知・注意)、Interest(興味・関心)、Search(検索)、Action(行動)、Share(共有)の頭文字を取った造語となっています。
このモデルでは、消費者が商品やサービスを購入するにあたって、まずはじめのステップが「Attention(認知・注意)」となるため、スタートの段階で認知度を向上させることが、いかに重要かわかります。
<認知向け広告の例>
過去に見たテレビCMで今でも記憶に残っている、つい口ずさんでしまうCMソングがあるなど、消費者の記憶に残りやすい広告というのはいつの時代も存在します。現在に至るまで多大なインパクトを残し、認知度を上げることに成功した例をいくつかご紹介します。
・「ファイト一発!」言わずと知れた、リポビタンDのCM
・「たらこ、たらこ…」キューピーたらこソースのCMで、CDも発売され大人気に
・「もっともっとタケモット」タケモトピアノのCMで、こちらもCDが発売
・懐かしいと感じる人も多い「きれいなお姉さんは、好きですか。」というフレーズPanasonicのCMで、松嶋菜々子さんが初代として起用
加えて、最近では新垣結衣さんの「おつかれ生です」というセリフがバズったアサヒ生ビールのCMなども印象に残っている方が多いと思います。
また、フレーズや歌が人気になったもの以外でも、シリーズものが話題を呼んだCMも多々あります。松田翔太さん、桐谷健太さん、濱田岳さんら豪華俳優陣が出演するau「三太郎シリーズ」、上戸彩さん、お父さん犬のカイくん、堺雅人さん、そしてブルース・ウィリスさんまでもが出演して話題を呼んだSoftBank「白戸家・ドラえもんシリーズ」、最近では星野源さん、吉岡里帆さん出演の日清「どんぎつねシリーズ」、ジャンボ宝くじのCMには妻夫木聡さん、今田美桜さんなど、こちらも豪華な顔ぶれが出演しました。
このように印象に残っているCMというのは、出し切れないほど数多くありますが、これらのCMなどが認知型広告の成功例といえるでしょう。インパクトのあるセリフや設定によって商品や企業名を広く認知してもらうことで、初めて次のステップである消費行動に繋げていくことができるといえます。
② 運用型広告
運用型広告とは、リアルタイムで「運用」していく広告のことで、広告主がターゲットや広告の内容を都度変更し、効果を高めていくものを指します。代表的な媒体としては、リスティング広告(=検索連動型広告:検索エンジンの検索結果画面に掲載されるテキスト)、ディスプレイ広告(Webサイトやアプリの広告枠に表示される広告)に加え、昨今ではSNS広告が急成長と遂げているそうです。SNS広告は、InstagramやYouTube、Facebookなど各プラットフォームに配信する広告で、SNSの種類によって利用者層や性別に差があるため、ある程度ターゲット層に合わせた広告を配信することが可能です。
2.運用型テレビCMはハイブリッドCM?
ここまで、広告を大きく分けた2種類について学んできましたが、ではここから本題の「運用型テレビCM」についての知識をつけていきましょう。
① 運用型テレビCMとは
運用型テレビCMとは、認知型広告である従来のテレビCMと、運用型広告を掛け合わせた広告のことをいいます、「第三のテレビCM」と表現されることもあります。
通常のテレビCMは、一度納品してしまえば広告枠や内容の変更をすることはもちろん不可能です。しかし、運用型テレビCMであれば、放映されたCMの効果検証を行い、より高い効果が出るものへと更新していくことが可能になります。
② 運用型テレビCMのメリット
■効果がリアルタイムにわかる
前述した内容にもありますが、運用型テレビCMは、効果をリアルタイムで計測するツールにより、放映してからそれほど時間を置かずに効果がどれだけあったのか、など可視化することができます。改善ポイントを見出し、すぐに内容を差し替えることも可能となっています。どの時間に流すのが良いのか、どの番組の間に流すのが良いのか、どの曜日が最適か、など詳細に改善点がわかるため、その都度軌道修正し、より高い効果を得ることができます。
■ターゲットを絞ることができる
従来のテレビCMは、不特定多数に対して放送し、高い認知度を誇る代わりにターゲット層を特定しにくいという特徴がありました。運用型テレビCMは、番組を指定したり、放送時間や曜日を指定することも可能になっているため、若者向けの商品を若年層に人気の番組中にCMとして流すことや、高齢者向けの商品のCMを日中に流し、高い効果を得ることが可能になっています。
■コストが抑えられる
CMを制作するにあたって、気になるのはやはりコスト面。
かかるコストはできるだけ安く抑えたいというのが企業側の気持ちでもあります。従来のテレビCMは、最低でも期間が1か月や1クール以上など期間が定められており、長期間繰り返し放送できるものだからこそ、費用が高くなってしまいます。
しかし、運用型テレビCMは1本から枠を購入することができるので、比較的安価で始めることが可能です。今までコスト面が壁となり、CMを制作したことがなくても、運用型テレビCMが登場してから初めてCMに挑戦した、という企業も多いそうです。
一般的に、従来のテレビCMにかかる費用はどれだけ抑えても数百万円、数千万円かかる場合もありますが、一方で運用型テレビCMは1本100万円~という、中小企業でも比較的手が出しやすい相場となっています。
③ なぜここまで注目されるようになったのか
運用型テレビCMが急成長する背景には、「SAS(スマートアドセールス)」が大きく関わっているようです。「SAS」とは、2020年2月からスタートしたテレビCM枠の新しい購入方法のことで、15秒CMを1本単位から購入できる商品のことを指します。
従来のテレビCMは、指定した番組内で流すタイムCMと、曜日や時間帯を指定して流すスポットCMの2種類がありますが、「SAS」はこのどちらにも属さず、1本単位からCM枠を購入でき、番組を指定することも可能になっています。
このように、テレビCMの自由度が増したことから、テレビCMに参入する企業が増えたことも、運用型テレビCMが注目される背景となっているようです。
3.運用型テレビCMサービスの比較
運用型テレビCMはまだ歴史が浅く、情報も少ないですが、積極的に運用型テレビCMサービスを展開している主な企業を、その特徴と合わせてご紹介します。
・株式会社テレシー「TELECY」
2020年に運用型テレビCMサービスを開始し、打ち合わせから提案、見積もり、発注、放映までワンストップで行っている会社です。独自の分析ロジックを所有しており、テレビCMの効果を可視化することによって効果測定を手早く行うことができるという特徴があります。最低金額100万円と、テレビCM相場ではかなり安価でのCM制作が可能になっています。
RPGゲームアプリ運営会社の指名検索数を約8倍に伸ばすなど、確かな実績があるようです。
・株式会社ノバセル「ノバセル」
デジタルマーケティングのようにテレビCMを運用することを可能にし、「成長と効率化を同時に実現する」という理念を持っている会社です。こちらもテレシー同様、全てワンストップで依頼することが可能になっています。
代表的なものとして、お天気アプリ「ウェザーニュース」では、地域別・機能別の掛け合わせで合計121パターンものクリエイティブを制作しました。その後放映検証を行い、より効果の高い放映枠とクリエイティブに集中的に投資した結果、2,000万ダウンロードを突破したという実績があります。
・株式会社トライステージ「ウルテレ」
「売上直結の改善を実現する運用型テレビCMサービス」として、独自に蓄積した豊富な実績データをもとに、よりターゲット層に合わせた効果の高いCMを提案・制作することを可能としています。
・株式会社スカイシーズ「CMダセルン」
「広告が高そう」「CM効果を数値で社内に説明できない」という企業からの悩みを受け、サービス展開を決意した会社で、こちらもワンストップ&安価で利用できます。
さらに、“お試しプラン”としてテレビCMを10万円で放映できるという、テレビCMをはじめてみたい企業にとっては嬉しいプランも用意しています。
大手アパレル販売業から大手飲食チェーンなど、40以上の業種での利用実績があるようです。
・株式会社博報堂DYメディアパートナーズ「Advertising as a Service」
https://www.hakuhodody-media.co.jp/aaas/afs/lp_01/
広告業界大手の博報堂グループが提供する運用型テレビCMサービス。年間300社以上の幅広い広告主、200社以上の放送局における約3,500億円のテレビ出稿実績がある博報堂グループのノウハウを活かし、テレビ業界や広告業界の中枢に位置する企業としての運用が可能です。
4.まとめ
ここまで読んで頂き、運用型テレビCMについて理解を深められたでしょうか。
広告のあり方が多種多様になっている現代だからこそ、運用型テレビCMのような、今までのテレビCMのイメージを破る画期的なCMの形態が生み出されました。
運用型テレビCMサービスを利用するにあたってのポイントは、“自社の目的を明確にすること”です。CMを打つことによって、どんな効果を得たいのか、どんな層をターゲットにしたいのか、などを明確化することによって、内容の構成や実際に放送する際の番組・時間帯選びなどがスムーズになります。
CMをはじめてみたい企業の方、自社のマーケティングに悩んでいる企業の方などは、この機会に改めて自社商品・サービスのマーケティングについて研究してみるのも良いかもしれません。